生活保護の基本原理・基本原則については、平成28年度の法務省専門職員採用試験の記述試験で出題されるなど、最頻出事項です。
各自治体の記述試験でもよく出されているので、原理と原則を逆に覚えないよう気をつけつつ、すべて説明できるようにしておきましょう。
簡単に説明すると、原理は世の中はこうなっているという性質で、原則はその性質に対してどうするかを人間が定めたルールといった感じです。
・基本原理
生活保護の基本原理には、国家責任の原理、無差別平等の原理、最低生活保障の原理、保護の補足性の原理があります。
国家責任の原理
国家責任の原理とは、生存権に基づき、国が生活に困窮する全ての国民に対し最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することです。
ここで言う自立とは、経済的自立だけではなく、健康的に暮らす日常生活自立と、社会的なつながりを回復・維持する社会的自立も含んでいます。
生活保護法には、最低生活保障以外にも自立の助長という目的がありますが、それを表したのが国家責任の原理です。
無差別平等の原理
無差別平等の原理とは、保護の要件を満たす限り、生活困窮の原因に関係なく無差別平等に保護を受けることができるという原理です。
たとえ、ギャンブルなどにお金を使いすぎて生活保護が必要になったとしても、保護をしなければならないということです。
旧生活保護法では、勤労意思のない者、勤労を怠る者、生計の維持に努めない者、素行不良な者は保護しないという欠格条項がありましたが、現在の生活保護法では削除されました。
「自己責任なのに生活保護を受けられるのはおかしい!」という意見もあるかもしれませんが、「お金がなくなった原因は関係ないよ」というのが現在の生活保護法です。
最低生活保障の原理
最低生活保障の原理とは、健康で文化的な生活水準を維持できるよう保障する原理です。
健康で文化的な生活水準が具体的にどのようなものかは明確にされておらず、厚生労働大臣が定める保護基準(最低生活費)に満たない部分について扶助を行うとされています。
保護の補足性の原理
保護の補足性の原理とは、保護を受ける人が資産、能力その他あらゆるものを活用し、それでも最低限度の生活が維持できない場合にそれを補足するために保護を行うという原理です。
民法で定められた扶養義務者が行う扶養や生活保護以外の扶助が、まず優先して行われます。
生活保護はお金に困れば誰でも受けられるというものではなく、本当にどうしようもないときの最終手段というわけです。
・基本原則
生活保護の基本原則には、申請保護の原則、基準及び程度の原則、必要即応の原則、世帯単位の原則があります。
申請保護の原則
申請保護の原則とは、保護は本人、扶養義務者、その他同居の親族の申請に基づいて開始することです。
しかし、緊急の場合は申請がなくても保護を行うことができる職権保護も定められています。
生活保護の不正受給を防ぐために、申請はかなり厳格化されています。
基準及び程度の原則
基準及び程度の原則とは、厚生労働大臣の定める保護基準により測定した需要を基とし、その人のお金や物品で満たすことのできない不足分を補う程度において行うことです。
生活保護は、保護基準と保護が必要な人の収入の差額を埋める形で行われます。
保護基準は、保護を必要とする人の年齢や性別、何人暮らしなのか、どこに暮らしているのかなどのよって支給される金額や物は異なるので、「生活保護受給者には、みんな毎月10万円ずつ支給」というように決まっているわけではありません。
必要即応の原則
必要即応の原則とは、保護が必要な人の年齢、性別、健康状態などの違いを考慮して保護を行うという原則です。
障害者加算や妊婦加算などが設けられているように、個々の需要に即した保護が行われます。
世帯単位の原則
世帯単位の原則とは、保護の要否や程度を世帯単位で定めることです。
ただし、学校に通うために一人暮らしをするときなど、例外として個人単位の保護(世帯分離)が認められることもあります。
まとめ
8つもあると覚えるのが大変ですよね…。
私は4つの原理を「最低な/ムササビが/国家に/捕捉・保護された」、4つの原則を「生活保護が必要な/世帯/申請/き(基準のき)て(程度のて)」と覚えました。
自分でいい語呂合わせが思い浮かばなかったら真似してみてください!
参考文献
TAC社会福祉士受験対策研究会(2018)『2019年版みんなが欲しかった!社会福祉士の教科書 共通科目編』TAC出版.
TAC社会福祉士受験対策研究会(2018)『2019年版みんなが欲しかった!社会福祉士の教科書 専門科目編』TAC出版.
一般社団法人日本ソーシャルワーカー教育学校連盟(2018)『2019社会福祉士国家試験過去問解説集』中央法規出版.